「獣の奏者(上橋 菜穂子)」の感想 NHK人気アニメ 獣の奏者エリン の原作
作品名 | 不確定世界の探偵物語 |
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著者 | 上橋 菜穂子(うえはし なほこ) |
ジャンル | ファンタジー |
出版元 | 講談社 |
評価 | 5点:★★★★★(超おすすめ) |
対象年齢 | 中学生以上 |
おすすめの人 | 政治まで絡んだ世界観のしっかりしたフィクションが好きな人。「百年法」「まおゆう魔王と勇者」「天冥の標」「銀河英雄伝説」あたりが好きな人にはぴったり。 |
ブログの説明文に「SF小説をメインに書評を書いていきます」なんて書いているのに、2冊めに取り上げるのがハイファンタジーとはどういうことなんだと自分で突っ込みたくなりますね。どーも、こんばんは。
タイトルにも書きましたが、「獣の奏者」は「獣の奏者エリン」という名称でNHKでアニメ化されたらしいです。結構人気があったらしく、同じ上橋菜穂子さん原作の「精霊の守り人」も続いてNHKアニメ化された模様。いろいろ儲かってそうですね。うらやましい。
この上橋菜穂子さん、児童文学の権威ある賞を多数受賞しておられまして、国際的にも認められる作家様のようなのでございます。私は守備範囲が違うせいか、正直あんまり存じ上げていなかったこともあり、30過ぎて児童文学もねーよなーとなんとなく敬遠しておった次第であります。
「獣の奏者」を読んでみたのも、気の迷いというか勢いというかそんな感じで、なんで買ったかきっかけが思い出せません。Kindleのサジェストにやたら登場するもんだからついかっとなってポチってしまっただけのような気もします。
ところがねえ、これがめちゃくちゃおもしろい。
闘蛇という巨大な爬虫類が兵器として活用されている中世じみた世界を舞台に、エリンという女性の生涯を追いかける形で物語は展開していくんですが、世界観・伏線・ストーリテリングのいずれも緻密。ご都合主義的な偶然はほとんど起こらず、非常に残酷で救いの少ない物語でもあり、子どもよりも大人が読んだ方が楽しめるんじゃないかなと思いましたです。
過酷な運命を背負った少女が学問で道を切り開くところからはじまり、政治に翻弄されながらも愛する伴侶を得て子を為し、育て、己の使命のために死ぬ。うーん、こうして考えるとスーパーキャリアウーマンの物語なのかもしれん。
SF読み的な視点からすごくよかったなあと思う点は、物語世界の科学水準では解明できないであろうことを謎のままにしているところ。作者の上橋菜穂子さんはWikipediaによるとSF作家としても紹介されており、またあとがきでは取材で関わった多くの学者さんへの謝辞が述べられているあたり、科学的考証をしっかりやっておられるんだなあと感心した次第。
私がそうだったのであえて言いたいのですが、この作品を「所詮は児童文学」「所詮はファンタジー」と思って敬遠されておられるのだとしたらもったいないのでぜひ読んでみてください。全4冊(+外伝1冊)の長編ですが、完結が近づくほどに読み終わるのがもったいないと思えてしまう1冊でした。
おすすめ。
こちらは外伝。本編で語られなかったエピソードが補完されています。本編のスリリングさはないし、単体で読んで面白いものでもないので本編を読んで好きになったら読みましょう。
この本が好きな人にはこちらもおすすめ
もし人類を不老化できる技術が開発されたら…というifを前提にしたSF小説。そのうち単体で紹介記事書きます。おもろい。
まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」(1) (角川コミックス・エース)
- 作者: 石田あきら,橙乃ままれ,水玉螢之丞・toi8
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2chのスレッド「魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」」からブレイクしたファンタジー小説。私はWeb版しか読んどらんのですが、歴史に造詣の深いであろう筆者があらゆる知識を動員して「剣と魔法の世界」にリアリティを与えているのが衒学的で面白い。ペダンティックあげるよ。
京極夏彦好きに合いそうな気がするのは私だけだろうか。
まだ完結していませんがハイパー傑作のスペース・オペラ。科学マニアのSF作家小川一水が繰り出す世界観はセンス・オブ・ワンダーてんこ盛りにも関わらずリアリティ抜群。
宇宙戦争から情報生命体、火星の農業まで描ける作家は他にいないんじゃないかと思いますですよ。
もはや古典。説明不要。登場人物の名前がいちいちゲルマン風でおぼえづらいのをだけを我慢すればめっちゃおもしろい作品です。
これを読んでいないとたまに変な人に馬鹿にされますが、読んだことのある人の方が少ないのは間違いない事実ですので「教養として読もう」とかではなく、宇宙国家同士がガチで戦争やるとどんな感じでことが進むのか見てみたいっていう、いわばSFミリオタ的属性の方が読むと幸せになれるんじゃないかと思います。