Kindleで本読んどる

Kindleでの電子書籍購入数が200冊を突破したので、SF小説をメインに書評や感想を書き散らします。

「アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス)」の感想 文句なしに泣ける名作

作品名 アルジャーノンに花束を
著者 ダニエル・キイス
ジャンル SF
出版元 早川書房
評価 5点:★★★★★(全力でおすすめ)
対象年齢 中学生以上
おすすめの人 あらゆる人

「面白いSF小説を教えろ。つまらなかったら殺す」ともし仮に脅迫を受けたとしたら紹介するのがこの1冊です。「都市と星(アーサー・C・クラーク)」も捨てがたいけれど、確実に誰が読んでも最高に面白いものを挙げるならこっちかなと。

さきほどちょろっと暗算してみたのですが、たぶん私は32年余りの人生において2千冊を超える小説を読んでおります。僭越ながら、活字中毒のはしくれを自称させていただいてもよろしいレベルでしょう。そんな私でございますが、鮮烈に記憶を残す作品というのはやはり一握り。とくに、読書好きだと人に話した際には「何がおすすめ?」と慣用句のように尋ねられるわけですが、そうした際に亥の一番に挙げるのがこの「アルジャーノンに花束を」なのであります。

せっかくSF小説中心に書評をやるというブログを立ち上げたにも関わらず、なぜこの作品を取り上げていなかったのか。たいへん迂闊であったというか、忸怩たる思いに憤懣やるかたないわけでございますが、いまね、amazonで検索をして衝撃の事実を知りました。ホントamazonの担当者、ないしは本作の版権保持者は何をやっているんだと。

Kindle化されてないのね、これ……。

Kindle化されていない本をこのブログで取り上げるのはポリシーに反するのですが、しかし、一人の活字中毒者としてこの作品を紹介しないわけには参りません。本当に、掛け値なしで面白いんですよ、この作品は。

というわけでね、みんなでKindle化リクエストボタンを押してくださいって気持ちを込めて感想を書きたいと思います。

って、わりと思いの丈はすでに書き尽くしてしまったのですが、あらすじや見どころなどを紹介せねば書評として成り立たないので蛇足ながら。

本作の舞台は現代、あるいはごく近しい近未来。主人公のチャーリイはいわゆる知的障害者で、子どものような心を持っております。そんな彼が「頭が良くなる薬」の臨床対象になるのです。万人が待ち望む「バカにつける薬」でありますね。こういう風に書くと頭が悪そうですが、実際その薬の効果は覿面であり、チャーリイはみるみるうちに知的能力を向上させ、余人の及ばない天才の領域に到達します。

そんでね、まあ展開を知っても面白さを損なうことはないと思うので書いちゃうんですが、その「バカにつける薬」には実は有効期間がありまして、せっかく天才となったチャーリイは最後にはバカに戻ってしまうのです。

(追記:って、薬じゃなくて脳外手術だった;失礼しました…orz)

この過程を、主人公の手記(っつうか日記というか)という形で表現をしています。知能指数が上がる過程において、それまで楽しめていた仕事がつまらなくなってしまったり、信頼している人が阿呆に見えてしまったり。頭が良いとは悲しいことなのだなあと思わせながら、知能指数が下り坂に入ると知的な自分を愛してくれた恋人が離れしまうのではだとか、自らの築き上げた理論が自分自身で理解できなくなってしまうだとか。最後には自分が何を失ってしまったのかさえ理解できなくなってしまう。

切ない読後感と併せて、人間の幸せとは何なのであろうなあとしんみり考えさせられる1作です。

って、こんな風に書くと小難しそうで読んでもらえそうにない。いや、読み味は軽いんですよ。それで、エンタメとして考えても超絶的に面白いんですよ。そんで泣ける。「泣ける」って言葉はいかにも軽々な感じで使いたくないんですが、この作品にだけは恥ずかしげもなく「泣ける名作」と言って推したい。

うー、あー、なんだろう。私の表現力ではこの作品の素晴らしさは到底伝えられませんのでとにかく読んでください。そしてKindle化リクエストボタンを押してください。

いやもうね、後悔させないので本当にお願いします。

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)