Kindleで本読んどる

Kindleでの電子書籍購入数が200冊を突破したので、SF小説をメインに書評や感想を書き散らします。

「ばいばい、アース 全4冊合本版 (冲方 丁)」の感想 剣と魔法のSFハイファンタジー

作品名 ばいばい、アース
著者 冲方 丁(うぶかた とう)
ジャンル SF、ファンタジー
出版元 KADOKAWA / 角川書店
評価 4点:★★★★☆(かなりおすすめ)
対象年齢 高校生以上
おすすめの人 上橋菜穂子作品が好きな人。異世界にどっぷりハマって現実を忘れたい人。

冲方丁という作家の多芸さには舌を巻きます。出世作の「マルドゥック・スクランブル」はSF、映画にもなった大ヒット作品「天地明察」は歴史小説。そして今回紹介する1冊は、SF要素は含めど基本はハイファンタジー。頭の中がどうなってるのか、一度頭蓋を開いてみてみたい。

本作の舞台はあらゆる鳥や獣が「花」と呼ばれる不思議な世界。剣の素材となる金属さえも果実から生まれ、主たる剣士と絆を結びながら成長していきます。読みはじめのときはあまりにも用語が現実から離れているので、とっつくまでに時間がかかりそう。ライトノベル風の可愛らしい表紙ではありますが、対象年齢を「高校生以上」としたのはそれが理由です。ちょっぴり濡れ場もあるしね。

この世界で生きる人々は、みんな普通の人間ではありません。牙や、鱗や、毛皮を持つ半人半獣がデフォルト。ケモナー大喜びですね。「犬のような顔」だとか、「兎のような耳」といった現実を少しでも想起させる表現が巧妙に避けられているため、登場人物一人ひとりがどんな姿をしているのか想像を巡らせるだけでも楽しいです。

しかし、主人公の少女、ラブラック=ベルはそうした異形の要素を持ちません。牙も鱗も毛皮もないつるつるの肌。つまり、我々の世界でいうところの普通の人間です。普通の人間であるがゆえに、異形がマジョリティであるこの世界ではのっぺらぼうの異形とされてしまいます。そして彼女は、どこかに存在するであろう自らのルーツを探す旅に出るのです。

さて、さきほど主人公のことを「普通の人間」と書きましたが、じつは普通じゃない点がたくさんあります。まず、「石の卵」なるものから誕生したということ。関わる人々から「理由(ことわり)の少女」と称されること。大地との繋がりが希薄なため、すさまじい跳躍力を持ち、自重で家具や床を切り裂いてしまう超重量の大剣「〈唸る剣〉ルンディング」を自在に振り回すこと。

そんなチートスペックな彼女ですから、戦場ではまさに一騎当千。例えるなら漫画ベルセルクの主人公ガッツを美少女に置き換えたような感じでしょうか。大剣を振るって鎧袖一触。竜巻のように敵を薙ぎ払っていくシーンは快感の一言につきます。

まあ、その辺がぜんぶSF的に収束していくオチに向けた伏線なんですけどね。

現実を忘れてどっぷり異世界旅行に浸りたい、そんな方におすすめの1冊でした。

ばいばい、アース 全4冊合本版 (角川文庫)

ばいばい、アース 全4冊合本版 (角川文庫)

 

「銀翼のイカロス(池井戸潤)」の感想 ドラマ半沢直樹の原作小説第4作

作品名 銀翼のイカロス
著者 池井戸潤
ジャンル 経済
出版元 ダイヤモンド社
評価 3点:★★★☆☆(おすすめ)
対象年齢 中学生以上
おすすめの人 半沢直樹シリーズのファン。職場で取引先や上司に鬱屈した気持ちを抱いている人

ドラマ半沢直樹はほとんど未見なんですが、原作小説は全部読んでおります。連続ドラマは長いのですよ。小説なら2時間で済むものを12時間もかけて鑑賞するのはちょっとしんどい。(ファンの方ごめんなさい。あくまで私の趣味・嗜好です)

「倍返しだ!」のセリフでおなじみの半沢直樹ですが、本作では(たぶん)1回しかそのセリフは登場しません。いや、以前までの3作でもそのセリフが出てきた回数はそれぞれ1桁前半だったと思うんですが、妙に印象に残りますよね、あれ。番宣CM等で繰り返し使われたせいなのでしょうか。星一徹のちゃぶ台返しと似たようなものなのでしょう。あれもエンドロールでは繰り返し登場したそうですが、本編では2回しかやってないそうです。意外。

閑話休題。

本作「銀翼のイカロス」の舞台はJALです。稲盛和夫が乗り込むタイミングぐらいのJALです。現実では国ぐるみの支援のおかげで見事復活を果たしました。免税やら借金棒引きやらを重ねた挙句、安売りで競合他社を圧迫するのだから横暴というか、そんな強くてニューゲーム状態なら誰だって再建できるといった批判もあったようですね。

この作品もそんな批判に調子を合わせるようにできており、本作におけるJAL=帝国航空は債権放棄も国の優遇措置もなしで再建できるというのに、民主党新政権……じゃなかった、民政党で売り出し中の若手議員が手柄欲しさに無茶な借金棒引きやらなんやらを押し付けてくるという役回り。

「現場=正義」「偉い人=悪」というシリーズを通じてわかりやすいテーマを徹底しておられるなあと。池井戸先生は鬱屈したサラリーマンの気持ちをよくわかっていらっしゃる。

誰かがどこかで書いていたのと思うのですけれども、この半沢直樹シリーズって基本的にはサラリーマン版水戸黄門なんですよね。すかっと気持ちがよく、エンターテイメントとしては一級。これは安心して楽しめるというプラスの面もあるのですが、一方でひねりがなくて深みに乏しいという欠点でもありましょう。

まあ、面白いかつまらないかと言われれば間違いなく面白い寄りですので、出張中の飛行機内で読むと状況も相まってますます楽しめるんじゃないかなと思う次第です。

銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

 

シリーズ1~3作目は以下でどうぞ。

オレたちバブル入行組

オレたちバブル入行組

 
オレたち花のバブル組

オレたち花のバブル組

 
ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

 

「鹿の王(上橋菜穂子)」の感想 七転八倒の息もつかせぬストーリー

作品名 鹿の王
著者 上橋菜穂子
ジャンル ファンタジー
出版元 KADOKAWA / 角川書店
評価 5点:★★★★★(超おすすめ)
対象年齢 中学生以上
おすすめの人 同作者の「獣の奏者」や歴史物、魔法の出てこないハイファンタジーが好きな人

先日、読みさしの状態で一度記事にしましたが、やっと読み終わりました「鹿の王」。通勤時間と昼休みはほぼこれに消えましたね。読了に要した時間は10時間くらいでしょうか。ボリューミィです。

この本は上下巻の構成で、上巻には「生き残った者」、下巻には「還って行く者」という副題がついています。Amazon Kindle版では上下合本版も発売されており、私が買ったのはそれ。まとめ買いだから安くなるということもなく、普通に上下巻を足した価格だったのですが、巻末に電子版限定の特典として、梶原にきさんの手になるイラスト集がついていました。これは分冊で買ってもつくのかしらん?

閑話休題。

主人公は飛鹿(ピュイカ)という軍用乗鹿を巧みに操る神出鬼没の戦闘部隊「独角」を束ねる精悍な男「欠け角のヴァン」。なんて書き出しをするとさぞ勇ましい戦闘シーンからはじまると思われそうですが、物語が紡がれるのはその「独角」が東方から攻め寄せた大国に討ち滅ぼされた後から。ヴァンは塩鉱山に奴隷としてつながれ、厳しい労働に耐えながら死を待つ過酷な日々を送っています。

そんなおり、塩鉱山を謎の獣が襲撃します。その牙にかかった人間は激烈な病に侵されてしまい、塩鉱山はあえなく全滅。生き残ったのはヴァンと家事奴隷の残した幼児のみ。物語は、彼らの生き様と絆を軸に進んでいきます。

「獣の奏者」と同じく、家族の絆がテーマであるのですが、本作の面白いところはそれに「人と病、そして生命の関係」と、スパイスとして多様な勢力が織りなす政治暗闘劇を加えたところ。東から押し寄せた東乎瑠(ツオル)帝国と辺境伯、それに呑み込まれつつもしたたかに自治を保つアカファ王国、それぞれに生き残りの道を探る各部族に、主を巧みに乗り換えながら知識と技術で安全たる影響力を維持するオタワルの学徒たち。

各勢力の思惑が縦横に折り重なり、二転三転どころか七転八倒するストーリーは息をつかせません。最後の1ページまで次の展開が気になって仕方がなくなります。

とても複雑でとんでもなく長い一作ですが、文句なしにおすすめです。 

鹿の王(上下合本版) (角川書店単行本)

鹿の王(上下合本版) (角川書店単行本)

 

 同じく上橋菜穂子さんの作品、「獣の奏者」の感想も書いておりますのでよろしければこちらもどうぞ。 

NHK人気アニメ 獣の奏者エリン の原作「獣の奏者(上橋 菜穂子)」の感想 - Kindleで本読んどる

「不確定世界の探偵物語(鏡明)」の感想 人類皆シュレディンガーの猫

作品名 不確定世界の探偵物語
著者 鏡明(かがみ あきら)
ジャンル SF
出版元 東京創元社
評価 4点:★★★★☆(かなりおすすめ)
対象年齢 中学生以上
おすすめの人 「アンドロイドの羊の夢(旧題:アンドロイドは電気羊の夢を見るか?)」のようなハードボイルド×SFが好きな人

ようやく看板どおりにSF小説の紹介です。記念すべき第1冊目は「不確定世界の探偵物語(鏡明)」。

タイムマシンが発明されてしまったために、過去改変が頻繁に行われるせいで現実があやふやになってしまった世界を舞台にした探偵小説です。タイムマシンを発明した人物は大富豪となって世界最高のVIPとなっており、そんな彼の思惑に振り回される私立探偵ノーマン・T・ギブソンが主人公。こんな不確かな世界で探偵をするなんてナンセンス極まりないと愚痴りながら事件を解決していきます。

通常のSF小説ではタイムパラドックスは発生しないもの、あるいは発生させてはならないものとして物語が組み立てられますが、この小説の面白いところはそんなお約束を無視してガンガン過去の改変が行われます。目の前に座っていた人物の過去が改変されてしまい、その場でまったくの別人に変異してしまうことなどもしばしば。

そんなんで物語が成立するのかよと心配になりますが、世界や記憶の変化には慣性のようなものが働くためにソフトランディングが可能なようで、たとえ目の前で変異が起きても「あ、こいつ変異してるわー」と認識できるという設定になっています。ややご都合主義的な感じもしますが、そもそもタイムマシンなんてもの自体が荒唐無稽ですから、設定にツッコミを入れても無駄でありましょう。

軽妙ながらも諦観と哀愁を抱えた主人公の造形もさることながら、一見冷徹な完璧美女である相棒のジェニファーのツンデレぶりも魅力的。ルパン三世におけるルパンと峰不二子、こち亀における両津勘吉と秋本・カトリーヌ・麗子のような付かず離れずの絶妙な関係も見ていてそわそわして素敵です。

物語の中途では、コメディタッチな軽さからのシリアス展開にハリウッド的安直さを感じるかもしれませんが、終盤のバタフライ・エフェクト的切なくも甘酸っぱい展開も見ものです。いやバタフライ・エフェクトもアメリカ映画なんですが。

 

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)

不確定世界の探偵物語 (創元SF文庫)

 

「鹿の王 上下合本版 (上橋菜穂子)」を読んどる

紙だと分厚すぎて分冊になってしまうものを、1冊で読めるのもKindleの良いところですね、っと。

「獣の奏者エリン」の原作小説や、「守り人シリーズ」で高名な上橋菜穂子さんの最新刊です。「獣の奏者」ですっかり魅せられてしまったので購入。そしてさっそく読みはじめました。ぼちぼち3~4時間は読んでいるのに40%に満ちません。なんというボリューム。

話は変わるんですが、Kinldleに限らず電子書籍の良いところでもあり、悪いところでもあるのが本のボリュームが直感的にわかりづらいところですね。読むのにかかっている時間の感覚からすると、この「鹿の王」はおそらくかの「バトル・ロワイアル」にも匹敵する分厚さなんじゃないかと思うのですが、電子書籍だとそういう量感がわかりません。短編だと思ったら意外と短くて肩透かしをくらったり、逆に短編だと思ったらめちゃくちゃ長くてしんどくなっちゃったこともあるので、このあたりはなんかこうわかりやすくできる手段はないのかなあとか。

それはともかく、この「鹿の王」もたいへんに面白い。ブログを書かねばならんという使命感さえなければこの記事を書いている時間も惜しんで読みふけっていたはず。

今回の上橋菜穂子ワールドは「病と人の関係」であるようです。

主人公は謎の疫病に侵され、死の淵に立たされるもなんとか復活。それによりどうも妙なスーパーパワーを得てしまったようです。狼のように嗅覚が敏感になったり、すさまじい筋力で鎖を引きちぎったり、そうかと思えば謎の獣使いに操られそうになってしまったり。

まだ読んでいる途中なので俯瞰した感想やあらすじの解説ができるわけではないんですが、読み進めるほどに謎が深まって面白くなる感じだぞー、これはー!

そしてまた関係ない話をしちゃうんですが、本の感想って読了する前よりも、読んでる最中の興奮を伝える方が面白い気がする。物語を追っている最中のワクワク感って、読み終えてしまうとどうしてもいくらか熱量を失ってしまうと思うのですよね。

というわけで、熱量がある間に「鹿の王」の世界に戻ります。

こういう読書感想を語り合えるコミュニティに参加したいなあ。 

鹿の王(上下合本版) (角川書店単行本)

鹿の王(上下合本版) (角川書店単行本)

読み終わったので感想を書きました。

七転八倒の息もつかせぬストーリー 「鹿の王(上橋菜穂子)」の感想 - Kindleで本読んどる

「獣の奏者(上橋 菜穂子)」の感想 NHK人気アニメ 獣の奏者エリン の原作

作品名 不確定世界の探偵物語
著者 上橋 菜穂子(うえはし なほこ)
ジャンル ファンタジー
出版元 講談社
評価 5点:★★★★★(超おすすめ)
対象年齢 中学生以上
おすすめの人 政治まで絡んだ世界観のしっかりしたフィクションが好きな人。「百年法」「まおゆう魔王と勇者」「天冥の標」「銀河英雄伝説」あたりが好きな人にはぴったり。

ブログの説明文に「SF小説をメインに書評を書いていきます」なんて書いているのに、2冊めに取り上げるのがハイファンタジーとはどういうことなんだと自分で突っ込みたくなりますね。どーも、こんばんは。

タイトルにも書きましたが、「獣の奏者」は「獣の奏者エリン」という名称でNHKでアニメ化されたらしいです。結構人気があったらしく、同じ上橋菜穂子さん原作の「精霊の守り人」も続いてNHKアニメ化された模様。いろいろ儲かってそうですね。うらやましい。

この上橋菜穂子さん、児童文学の権威ある賞を多数受賞しておられまして、国際的にも認められる作家様のようなのでございます。私は守備範囲が違うせいか、正直あんまり存じ上げていなかったこともあり、30過ぎて児童文学もねーよなーとなんとなく敬遠しておった次第であります。

「獣の奏者」を読んでみたのも、気の迷いというか勢いというかそんな感じで、なんで買ったかきっかけが思い出せません。Kindleのサジェストにやたら登場するもんだからついかっとなってポチってしまっただけのような気もします。

ところがねえ、これがめちゃくちゃおもしろい。

闘蛇という巨大な爬虫類が兵器として活用されている中世じみた世界を舞台に、エリンという女性の生涯を追いかける形で物語は展開していくんですが、世界観・伏線・ストーリテリングのいずれも緻密。ご都合主義的な偶然はほとんど起こらず、非常に残酷で救いの少ない物語でもあり、子どもよりも大人が読んだ方が楽しめるんじゃないかなと思いましたです。

過酷な運命を背負った少女が学問で道を切り開くところからはじまり、政治に翻弄されながらも愛する伴侶を得て子を為し、育て、己の使命のために死ぬ。うーん、こうして考えるとスーパーキャリアウーマンの物語なのかもしれん。

SF読み的な視点からすごくよかったなあと思う点は、物語世界の科学水準では解明できないであろうことを謎のままにしているところ。作者の上橋菜穂子さんはWikipediaによるとSF作家としても紹介されており、またあとがきでは取材で関わった多くの学者さんへの謝辞が述べられているあたり、科学的考証をしっかりやっておられるんだなあと感心した次第。

私がそうだったのであえて言いたいのですが、この作品を「所詮は児童文学」「所詮はファンタジー」と思って敬遠されておられるのだとしたらもったいないのでぜひ読んでみてください。全4冊(+外伝1冊)の長編ですが、完結が近づくほどに読み終わるのがもったいないと思えてしまう1冊でした。

おすすめ。

 

獣の奏者 I闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 I闘蛇編 (講談社文庫)

 

 

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)

 

こちらは外伝。本編で語られなかったエピソードが補完されています。本編のスリリングさはないし、単体で読んで面白いものでもないので本編を読んで好きになったら読みましょう。

この本が好きな人にはこちらもおすすめ

百年法 上: 1 (角川書店単行本)

百年法 上: 1 (角川書店単行本)

 

もし人類を不老化できる技術が開発されたら…というifを前提にしたSF小説。そのうち単体で紹介記事書きます。おもろい。

まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」(1) (角川コミックス・エース)

まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」(1) (角川コミックス・エース)

  • 作者: 石田あきら,橙乃ままれ,水玉螢之丞・toi8
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2012/09/01
  • メディア: Kindle版
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2chのスレッド「魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」」からブレイクしたファンタジー小説。私はWeb版しか読んどらんのですが、歴史に造詣の深いであろう筆者があらゆる知識を動員して「剣と魔法の世界」にリアリティを与えているのが衒学的で面白い。ペダンティックあげるよ。

京極夏彦好きに合いそうな気がするのは私だけだろうか。

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

天冥の標 ? メニー・メニー・シープ (上)

 

まだ完結していませんがハイパー傑作のスペース・オペラ。科学マニアのSF作家小川一水が繰り出す世界観はセンス・オブ・ワンダーてんこ盛りにも関わらずリアリティ抜群。

宇宙戦争から情報生命体、火星の農業まで描ける作家は他にいないんじゃないかと思いますですよ。

銀河英雄伝説1 黎明篇 (らいとすたっふ文庫)

銀河英雄伝説1 黎明篇 (らいとすたっふ文庫)

 

もはや古典。説明不要。登場人物の名前がいちいちゲルマン風でおぼえづらいのをだけを我慢すればめっちゃおもしろい作品です。

これを読んでいないとたまに変な人に馬鹿にされますが、読んだことのある人の方が少ないのは間違いない事実ですので「教養として読もう」とかではなく、宇宙国家同士がガチで戦争やるとどんな感じでことが進むのか見てみたいっていう、いわばSFミリオタ的属性の方が読むと幸せになれるんじゃないかと思います。

Kindle とは

改めて「Kindleって何?」と尋ねられると、多くの方が戸惑ってしまうのではないでしょうか。

あえてひとことで言ってしまうなら、Kindleとは、正確にはAmazon Kindle(アマゾン キンドル)という名称で、世界最大のインターネットコマースサイトのAmazonが提供する電子書籍専用端末、ならびにコンテンツの販売サービスを指す言葉です。意外なほど広範にサービスが展開されているため、全貌がつかみにくいサービスになっていると思います。

そこでここでは、そんなKindleについて簡単な解説をしてみたいと思います。なお、Kindleは頻繁にアップデートのされるサービス群ですので、あくまで本稿執筆時点での情報とお考えください。

端末としてのKindle

Kindle Paperwhite(キンドル ペーパーホワイト)

Kindleと聞いたときに真っ先に思い浮かべる方が多いのがこの電子書籍端末ではないでしょうか。E-inkという省エネに優れ、紙の質感に近く目にやさしい液晶を備えたこの端末は、電子書籍専用端末として最高の使い心地だと思っています。

筆者はこの端末の日本版第一号を予約購入しましたが、お世辞抜きに素晴らしい読書体験をもたらしてくれました。文庫本よりも薄く、軽く、数百冊分のデータを持ち運べ、バッテリー長持ちで充電は週に1度程度で十二分なほど。スマートフォンなどの液晶とは違い、自発光しないので目に優しく、直射日光の当たる屋外でもストレスなく読める。もう絶対に手放したくないガジェットです。

しかし一方で弱点もあります。まずはページ送りが遅いこと。紙のレスポンシビリティには遠く及びません。後から繰り返して読みたい専門書や技術書などはKindle Paperwhiteは向かないでしょう。また、私は活字本しか買ったことがないのでわからないのですが、1ページあたりにかける時間の少ない漫画もあまり気持ちよく読めないらしいです。また、白黒ですのでカラー写真の入ったコンテンツにも向きませんし、ウェブブラウズにも不向きです。

ざっくり言ってしまえば、活字中毒者専用端末といったところでしょうか。

なお、Paperwhiteは10,280円ですが、もうひとつ下のモデルとして6,980円のエントリータイプもあります。

Kindle Paperwhite

Kindle Paperwhite

 

 

Kindle Fire(キンドル ファイア)

KindleのタブレットバージョンがKindle Fireシリーズです。最新版では「Kindle」の名称が外れ、単に「Fire」となりました。

高性能で低価格なタブレットで、コストパフォーマンスがよいのですが、一方でAmazonに最適化したカスタマイズが施されているため、Kindleストアで提供されるアプリやコンテンツしか利用できないという欠点があります。Androidベースですので、Google Playのアプリくらいは利用できて欲しいものですが、残念ながらそれは不可能です。

普及台数もそれほど多くないため、アプリ方面ではソフト不足が否めないでしょう。Fireを買うのであれば、Kindleストアで購入できる映画やアニメ、書籍や雑誌などを楽しむためのものだと割りきった方がよいと思います。iPadなどの一般のタブレットを購入するイメージで買ってしまうと後悔は避けられないでしょう。

 

Fire HD 7タブレット―8GB、ブラック

Fire HD 7タブレット―8GB、ブラック

 

 

Kindle Voyage(キンドル ボヤージ)

2014年9月19日に発表された電子書籍専用端末の最新版です。Kindle Paperwhiteの上位機種と言えるでしょうね。私は思わず予約をしてしまいましたが、世間では「白黒のE-ink端末で2万円超えなんて高値すぎる」という声が多かったようです。

しかし、考えてみてください。2万円は確かに安くない出費ですが、この手のものって2年程度は使うわけです。700日以上は使うわけですね。日割りしてみればわずか30円程度。缶ジュースよりもはるかに安い値段です。そう思えば、わずかそれだけの出費で読書体験がぐんと向上するならその程度の出費を惜しむほうがもったいないわけなのですよ。

Kindle Voyageにおいて変更・進化した複数あるのですが、私が注目しているのはページ送りまわりの進化のみです。その部分だけスイスイになってくれたら、私はもうそれ以上求めるものはありませんので(笑)。

 

Kindle Voyage―Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル

Kindle Voyage―Wi-Fi、キャンペーン情報つきモデル

 

 

Kindleアプリ

Kindleのコンテンツを楽しむには、専用端末が必須なわけではありません。iOS向けにも、Android向けにもKindleアプリがリリースされていますので、お手持ちのスマートフォンやタブレットでもKindleのコンテンツを楽しむことができます。

わざわざ専用端末を購入する人はまれかと思いますので、おそらくほとんどのKindleユーザーはアプリ経由なのではと予想。私のスマホにもKindleアプリが入っています。しかし、スマホのちっちゃい画面で読書をする気になれないのでほとんど放置状態。

なお、海外ではPCで使えるアプリも公開されているのですが、日本では権利関係が難しいのかいまだに実現されていません。先日、ようやく雑誌と漫画の読めるPC向けアプリが日本でも公開されたそうなのですが、両方とも私が手を出さないコンテンツなのでまったくありがたくない……。

PCに向かって書評を書いたり、企画書用に引用したりしたいときはPCで見られた方が絶対に便利ですので、早く日本でも解禁されて欲しいですね。

コンテンツプラットフォームとしてのKindle

Kindle向けのコンテンツは基本的にはamazon内にある「Kindleストア」で入手できます。取り扱っているコンテンツは電子書籍の他に雑誌やビデオ、Fire向けのアプリケーションも。もはやデジタル蔦屋状態ですね。

電子書籍

書籍のECとしてスタートしたamazonですから、やはり真っ先に思い浮かぶのが電子書籍でしょう。一昨年の日本版開始時には品揃えが少々さびしいように感じましたが、日に日に取り扱いを増やしており、いまでは「読みたいものが見つからない」ということはかなり減ったように感じています。

まあ、古いSF小説をもっとKindle化して欲しいとか、購入済みの本をリストから消せるようにして欲しいとかそういう要望はあるんですが。「リングワールド」とか「竜の卵」とか、何度Kindle化リクエストボタンを押していることか……。

不満ついでに書いてしまいますと、新刊はまず紙で出して、数週間から数カ月遅れて電子書籍化する出版社があるのも不満なところです。こっちはもう紙の本を増やしたくないんだよう。

Amazon Fire 対応アプリ・ゲーム

なお、電子書籍には青空文庫のデータもひと通り収蔵されているので、著作権の切れた作家の名作を無料で楽しむことも可能です。

Amazonインスタントビデオストア&オーディオ

私は一度も利用したことがないのですが、動画配信もがんばっているみたいです。新作もじゃんじゃん配信されているイメージ。

この領域はTSUTAYAや楽天、DMMなどもしのぎを削っておりますが、果たしてどこが勝者となるのか見ものです。どこも利益は出していると思うので、ウィナー・テイク・オールとはならないでしょうけれど。

Amazon Fire 対応アプリ・ゲーム ストア

Fireで使えるアプリを扱うストアです。

ごめんなさい、Fire持ってない(し、買う気もない)からよくわからない……。

ざっと見る感じでは、iOSやAndroidで人気の定番アプリの移植版はある程度そろっている模様。がんばって誘致しているんでしょうね。まあ、Fireを買った人はここのお世話になるんだと思います。

締めのひと言

さらっとKindleについて大枠を解説するつもりがクソ長くなってしまったんですがなんでしょうかこれは。

最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。